
せっかく手に入れたマイホームでの暮らしが板についてきた頃、会社から突然の転勤辞令。
頭が真っ白になってしまうのも無理はありません。
「せっかく買った持ち家はどうするべき?」と悩み、夜も眠れない日々を過ごしている方も多いのではないでしょうか。
売却して身軽になるべきか、それとも将来戻ってくることを見越して維持するべきか。
はたまた、誰かに貸して家賃収入を得るという選択肢もあるかもしれません。
私自身も不動産に関わる中で、こういった相談をよく受けますが、みなさん一様に「貸したくないけど家賃は欲しい」「住宅ローン控除はどうなるの?」「住所変更の手続きは?」といった多くの疑問や不安を抱えています。
実は、持ち家がある状態での転勤には、金銭的なリスクや管理の手間だけでなく、会社の補助制度の有無など、確認すべきポイントが山積みなんですね。
この記事では、資産運用を実践する私の視点から、後悔しないための判断基準をわかりやすくお伝えします。
この記事のポイント
- 転勤期間や家族の帯同有無による最適な選択肢がわかる
- 持ち家を貸す場合と売る場合のメリット・デメリットを整理できる
- 住宅ローン控除や税金に関する注意点を把握できる
- 後悔しない決断をするための具体的な手順が明確になる
転勤での持ち家対策、まずは「いくらで売れるか」を知ることが最優先です
悩む前に、現状の資産価値を把握しないと正しい判断はできません。
オーバーローンかアンダーローンかを知るだけで、選択肢は明確になります。
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転勤が決まったら持ち家をどうするか?判断の基準
転勤が決まったとき、一番やってはいけないのは「焦って決めること」です。
引越しの準備や引き継ぎで忙しいとは思いますが、持ち家の扱いは資産状況や家族の生活に直結する重大な決断になります。
万人に共通するたった一つの正解はありません。
「転勤の期間」「戻ってくる意思」「家族の状況」という3つの軸で、自分たちに合った方法を選ぶことが大切なんですね。
ここでは、それぞれの選択肢について判断の基準となるポイントを解説していきます。
単身赴任で家族が残れば住宅ローン控除は継続

まず最初に検討したいのが、ご主人(または奥様)だけが単身赴任をして、ご家族はそのまま持ち家に住み続けるというパターンです。
この選択肢の最大のメリットは、何と言っても住宅ローン控除が継続できる
という点にあります。
住宅ローン控除は原則として「本人が住んでいること」が条件ですが、やむを得ない転勤で家族が住み続ける場合は、例外として適用が認められるケースがほとんどだからです。
また、お子さんの転校を避けられたり、配偶者の方が仕事を辞めずに済んだりと、生活環境を変えなくて済むのも大きな利点ですね。
ただし、二重生活になるため生活費の負担が増えることや、家族と離れて暮らす寂しさは覚悟しなければなりません。
転勤期間が1〜2年と短い場合や、子供の学校のタイミングが重要な時期であれば、まずはこの選択肢を軸に考えるのが良いでしょう。
持ち家があるのに転勤になった場合のリスク
一方で、家族全員で帯同する場合、「持ち家をどうするか」という問題に直面します。
ここで知っておくべきなのは、持ち家を保有し続けることのリスクです。
誰も住んでいない家は、驚くほどのスピードで傷んでいきます。
換気がされないことでカビが発生したり、配管が傷んだり、あるいは不審者が侵入したりといったセキュリティ面でのリスクも無視できません。
また、金銭的なリスクもあります。
住宅ローンと転勤先の家賃という「ダブルローン」状態になるため、家計への負担は相当なものになるでしょう。
さらに、もし「とりあえず貸せばいいか」と安易に賃貸に出してしまうと、いざ自分が戻りたくなったときに借主が出て行ってくれず、自分の家なのに住めないというトラブルに発展する可能性もあるのです。
注意ポイント
持ち家を空き家にする場合でも、固定資産税や都市計画税といった税金はかかり続けます。
マンションの場合は管理費や修繕積立金の支払いも続くため、誰も住んでいない家にお金を払い続ける「金食い虫」状態になるリスクも考慮しておきましょう。
空き家リスクを負う前に、現在の資産価値を確認しましょう
維持費や管理の手間を考えれば、手放して現金化するのも賢い選択です。
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戻ってくる意思があるなら定期借家契約で貸す

「転勤は3年〜5年程度で、必ず戻ってくる予定がある」
「でも、その間家を空けておくのはもったいないし、ローン返済の足しにしたい」
そう考えるなら、賃貸に出すのが有効な手段になります。
ただし、ここで絶対に間違えてはいけないのが契約の種類です。
必ず定期借家契約(ていきしゃっかけいやく)
を選んでください。
一般的な「普通借家契約」では、借主の権利が非常に強く守られているため、貸主の都合で「帰任したので出て行ってください」と言っても、正当事由がない限り拒否されてしまいます。
これに対し、定期借家契約であれば、あらかじめ決めた期間が満了すれば確実に契約が終了します。
(出典:国土交通省「定期借家制度について」)
これなら、転勤から戻ってくるタイミングに合わせて確実に家を明け渡してもらえるので安心ですね。
ただし、期間が決まっている分、相場より家賃を少し安く設定しないと借り手が見つかりにくいという側面もあることは覚えておきましょう。
転勤時の住所変更や住民票の手続きはどうする
転勤に伴う手続きで悩ましいのが、住民票の異動(住所変更)です。
法律上は、生活の拠点が移る場合は住民票を移す義務があります。
家族で帯同して引っ越す場合は、当然ながら新しい住所へ住民票を移すことになります。
問題は単身赴任の場合ですね。
週末ごとに家に帰るような生活実態があれば、「生活の拠点は変わっていない」とみなして住民票を移さないケースも実務上はあるようです。
しかし、住宅ローン控除や免許証の更新、選挙権、児童手当などの行政サービスに関わってくるため、原則としては居住実態に合わせて異動させるのが基本です。
特に住宅ローン控除に関しては、「家族全員が転居して家が空き家になる」場合は、その期間中は控除が受けられなくなるという大きなデメリットがあります。
住民票を移すタイミングで、税務署への届出が必要になることもあるので、事前に確認しておきましょう。
なかには「住民票だけ残しておけば住宅ローン控除は受け続けられるのでは?」と考える方もいるかもしれません。しかし、実態のない住民票操作は非常にリスクが高い行為です。
貸したくないなら空き家として維持する方法

「他人に自分の家を使われるのは生理的に無理!」
「知らない人にキッチンやトイレを使われるなんて耐えられない」
そう思う方は、無理に貸す必要はありません。
貸したくないのであれば、空き家として適切に維持管理する方法を選びましょう。
先ほども触れましたが、家は人が住まないと傷みます。
そのため、定期的に風を通したり、水を流したりする管理が必要です。
実家が近くて親族にお願いできるならそれが一番コストがかかりませんが、難しい場合は空き家管理サービス
を利用するのがおすすめです。
月額数千円から1万円程度で、不動産管理会社や警備会社が見回りや換気を行ってくれます。
コストはかかりますが、大切な資産を守るための必要経費と割り切ることも大切ですね。
転勤時に持ち家をどうするか決める手順と注意点

方針が決まってきたら、次は具体的なアクションプランに移りましょう。
「なんとなく」で進めてしまうと、後から思わぬ出費やトラブルに巻き込まれる可能性があります。
ここでは、実際に動く際の手順と、絶対に押さえておくべき注意点について解説します。
私自身の経験からも、事前の確認が結果を大きく左右すると断言できます。
持ち家を売るなら査定でオーバーローンか確認
もし「もうこの場所に戻る予定はない」「今の家は手放してスッキリしたい」と考えるなら、売却が選択肢に入ります。
この時、最初にやるべきは不動産査定を受けて、今の家の価値を知ること
です。
重要なのは、売却想定価格と住宅ローンの残債(残りの借金額)を比較することです。
- アンダーローン
売却価格 > ローン残債(売れば手元にお金が残る状態。スムーズに売却可能) - オーバーローン
売却価格 < ローン残債(売っても借金が残る状態。差額を現金で用意しないと売却できない)
特に購入してから日が浅い場合、諸費用を含めるとオーバーローンになるケースが少なくありません。
オーバーローンの場合、手出しの現金を用意できなければ売ることすらできないため、まずは現実的な数字を把握することから始めましょう。
自分の家が現在いくらで売れるのか、またオーバーローンになるのかを正確に知るためには、複数の会社に査定を依頼して比較することが不可欠です。
賃貸に出すなら家賃収入と確定申告の必要性

持ち家を賃貸に出す場合、あなたは立派な「大家さん」になります。
つまり、毎月入ってくる家賃は「不動産所得」となり、確定申告をして税金を納める義務が発生します。
(出典:国税庁「No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)」)
会社員の方は年末調整だけで済ませていることが多いと思いますが、家賃収入がある場合は自分で申告しなければなりません。
ただし、すべての収入が課税されるわけではなく、固定資産税や建物の減価償却費、管理会社への委託料、ローンの金利分などは「経費」として差し引くことができます。
「家賃が入るから儲かる!」と思いきや、税金や修繕費を引くと手残りは意外と少ない、なんてこともありますので、収支シミュレーションは厳しめに行うのがコツです。
住宅ローンが残っているなら銀行への相談が必須
これは本当に重要なことなので、声を大にして言います。
住宅ローンが残っている状態で家を賃貸に出す場合、必ず銀行へ事前に相談してください。
住宅ローンというのは、「本人や家族が住むための家」だからこそ、金利が安く設定されています。
それを無断で他人に貸して収益を得る行為は、「資金使途違反」とみなされ、最悪の場合、ローンの一括返済を求められるリスクがあります。
「バレなきゃ大丈夫」と思うのは危険です。銀行への相談手順とリスク回避については、以下の記事で詳しく解説しています。
「バレなきゃ大丈夫」なんて甘い考えは捨ててください。
ただし、転勤という「やむを得ない事情」がある場合は、銀行に相談すれば一時的に賃貸に出すことを認めてくれるケースが多いです。
コソコソせずに、堂々と事情を説明して手続きを踏むことが、資産を守る一番の近道ですね。
リロケーションや借り上げ制度など会社の補助活用

最後に、お勤め先の制度もしっかり確認しておきましょう。
会社によっては、転勤者の持ち家を会社が借り上げてくれる制度や、リロケーション(留守宅管理)にかかる費用を補助してくれる福利厚生がある場合があります。
もし会社借り上げ制度があれば、空室リスクを負うことなく安定した家賃が入ってくるかもしれません。
また、転勤先での家賃補助が手厚ければ、持ち家を空き家にしたままでも金銭的なダメージは少なくて済むかもしれません。
使える制度はフル活用して、少しでも負担を減らす工夫をしましょう。
まとめ:転勤で持ち家をどうするかは家族と相談
ここまで、転勤時の持ち家の扱いについて、様々な角度からお話ししてきました。
最後に改めて、判断のためのアクションプランを整理しておきます。
- 転勤期間と戻る意思を確認する
(短期なら維持、長期・未定なら売却か賃貸を検討) - 家族の意向を最優先にする
(単身赴任か帯同か、子供の学校や生活環境をどうするか) - 資産状況をチェックする
(住宅ローンの残債、現在の査定額、家賃相場) - 専門家に相談する
(銀行への連絡、不動産会社への査定依頼)
お金のことももちろん大切ですが、一番大切なのは家族が笑顔で暮らせることです。
「資産運用としてどうするのが正解か」だけでなく、「家族にとってどうするのが幸せか」という視点を忘れずに、パートナーとじっくり話し合ってみてくださいね。
納得のいく選択ができるよう、応援しています。
転勤は資産整理の好機。曖昧に残さず、数字で判断しましょう
「とりあえず貸す」「空き家のまま」が一番のリスクです。
もし早期売却をご希望なら、仲介だけでなく「買取」という選択肢もあります。
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免責事項
本記事で紹介した税制や住宅ローン控除の適用条件、不動産取引に関する情報は、執筆時点での一般的な目安となります。個別の契約内容や金融機関の判断、税制改正などにより、取り扱いが異なる場合があります。正確な情報は国税庁の公式サイトや金融機関、不動産会社等に直接ご確認いただくか、税理士などの専門家にご相談ください。最終的な判断はご自身の責任において行っていただきますようお願いいたします。