住宅ローン控除で住民票だけ移すけど住まないのはバレる?リスク解説

住宅ローン控除で住民票だけ移すけど住まないのはバレる?リスク解説

「住宅ローン控除を受けたいけれど、事情があって実際には住めない」

「住民票だけ移すという方法なら、住まない状態でもバレずに控除を受けられるのではないか」

そんなふうに考えて、検索している方が多いのではないでしょうか。

数千万円単位の買い物ですから、少しでも節税して手元にお金を残したいという気持ち、痛いほどよくわかります。

しかし、結論から言うと住民票などの書類上の操作だけで居住実態をごまかすのは、極めてリスクが高い行為です。

税務署の調査能力は非常に高く、住んでいることの証明ができないと判断されれば、遡って課税されるだけでなく、社会的な信用まで失いかねません。

この記事では、安易な裏技に頼ることなく、正しい知識で資産を守るための情報を共有します。

この記事のポイント

  • 住民票の移動だけでは税務署の調査で居住実態がないことを見抜かれる
  • 不正受給が発覚すると重加算税や一括返済などの重いペナルティがある
  • 6ヶ月以内に住めない場合や転勤などの事情に応じた正しい対処法がある
  • 家族のみの居住や再適用の手続きを知ることで合法的にメリットを受けられる

 

住宅ローン控除で住民票だけ移し住まないとバレる理由

住宅ローン控除で住民票だけ移し住まないとバレる理由

「役所や税務署なんて、書類さえ整っていれば現場まで見に来ないだろう」と高を括っていると、後で痛い目を見ることになります。

昨今の税務調査システムは非常に高度化しており、住民票の移動だけでは居住実態の偽装を隠し通すことはほぼ不可能です。

ここでは、なぜ「住んでいない」ことがバレてしまうのか、その具体的な理由と、バレた時に降りかかる甚大なリスクについて解説します。

 

住んでいる証明は水道光熱費等で確認される

税務署が居住実態を確認する際、住民票以上に重視するのがライフラインの使用状況です。

人間が生活していれば、必ず電気、ガス、水道を使いますよね。

もし住民票を移しているにもかかわらず、これらの使用量が極端に少なかったり、あるいは基本料金のみの状態が続いていたりすれば、「ここには誰も住んでいない」と判断されるのは当然のことです。

「たまに電気をつけていればいいだろう」と考える方もいるかもしれませんが、生活実態のある使用量データと、単なる通電のデータは全く異なります。

また、これ以外にも以下のような要素から総合的に判断されます。

  • 郵便物の転送状況
    重要な郵便物が転送されている、あるいはポストに溜まりっぱなしになっている。
  • 近隣への聞き込み調査
    税務職員が近隣住民へ「この家に普段誰かいますか?」とヒアリングを行うことがあります。
  • 通勤経路の定期券購入履歴
    会社に届け出ている住所と実際の通勤経路の矛盾も調査対象になります。

このように、住んでいる証明をするためには、書類上の住所だけでなく、客観的な生活の痕跡が不可欠なのです。

 

住宅ローン控除の不正受給は詐欺罪や延滞税のリスク

住宅ローン控除の不正受給は詐欺罪や延滞税のリスク

もし不正受給が発覚した場合、単に「控除された分を返せば終わり」ではありません。

本来納めるべき税金を免れたわけですから、以下のような金銭的なペナルティが課されます。

  1. 追徴課税
    本来支払うべきだった税金に加え、申告漏れに対するペナルティが加算されます。
  2. 延滞税
    納付期限から遅れた日数分の利息のような税金がかかります。
  3. 重加算税
    悪質な隠蔽や仮装と判断された場合、さらに重い税率(35%〜40%程度)が課されます。

さらに深刻なのは、これが「詐欺罪」として刑事事件に発展する可能性もゼロではないということです。

国の制度を悪用して金を騙し取ったとみなされれば、資産運用どころか社会的な地位を失うことになりかねません。

目先の数十万円のために背負うリスクとしては、あまりにも大きすぎると言えるでしょう。

 

住民票移動だけで住まないのは違法行為になる

住宅ローン控除の問題以前に、そもそも「住んでいない場所に住民票を移す」こと自体が、法律に抵触する行為です。

住民基本台帳法では、正当な理由なく虚偽の届出をすることを禁じています。(参考:総務省「住民基本台帳等 住所の届出」)

また、公正証書原本不実記載等罪(刑法第157条)に問われる可能性もあります。

公務員に対して嘘の申立てをして、戸籍や住民票に嘘の記載をさせる行為ですね。

「みんなやっているだろう」という軽い気持ちが、前科のつく犯罪行為になり得るということは、肝に銘じておく必要があります。

もし「住めない事情」が長引きそうであれば、リスクを負って空き家のまま維持するよりも、売却して資産を整理するのも一つの賢明な選択肢です。まずは自分の家がいくらで売れるのか、適正価格を知ることから始めてみてはいかがでしょうか。

 

6ヶ月以内に住めないと控除要件から外れる

6ヶ月以内に住めないと控除要件から外れる

住宅ローン控除を受けるための大前提として、「住宅の取得日から6ヶ月以内に入居し、かつその年の12月31日まで引き続き住んでいること」という要件があります。

これは、「実際に生活の拠点として使っているか」を問うものです。

注意

「週末だけ過ごすセカンドハウス」や「別荘」としての利用は、生活の本拠とは認められないため、住宅ローン控除の対象外となります。

仕事が忙しくて引っ越しが間に合わず、6ヶ月以内に住めないという状況になってしまった場合、残念ながらその住宅での控除適用要件から外れてしまいます。

この期限は厳格に決められているため、スケジューリングには十分な注意が必要です。

 

賃貸に出すと住宅ローンの一括返済を求められる

もし、「自分は住まないけれど、空けておくのはもったいないから賃貸に出して家賃収入を得よう」と考えているなら、今すぐその考えを改めてください。

住宅ローンはあくまで「本人(および家族)が住むための家」に対して、低金利で融資されるものです。

これを無断で賃貸物件として運用することは、金融機関との契約(金銭消費貸借契約)違反になります。

銀行にバレた場合、残債の一括返済を求められる可能性が非常に高いです。

数千万円のお金を即座に用意できなければ、最悪の場合、家を競売にかけられ、住む場所も資産も失うことになります。

「転勤の間だけならバレないのでは?」「銀行に黙って貸しても大丈夫?」と考えている方は危険です。以下の記事で、住宅ローン返済中の賃貸がバレる理由と、銀行への正しい相談手順について詳しく解説しています。

 

住宅ローン控除は住民票だけ移して住まないなら相談を

住宅ローン控除は住民票だけ移して住まないなら相談を

ここまで「やってはいけないこと」を中心に解説してきましたが、人生には予期せぬ転勤や病気など、どうしても住めなくなる事情が発生することもありますよね。

そういった「やむを得ない事情」がある場合には、国も鬼ではありません。

適切な手続きを踏むことで、控除を継続できたり、戻ってきた後に再適用を受けられたりする救済措置が用意されています。

不正に手を染めるのではなく、堂々と制度を利用する方法を確認しましょう。

 

家族のみ居住する手続きで控除継続が可能

例えば、旦那さんが急な転勤で単身赴任になり、購入した家には奥さんとお子さんが住み続ける、というケースです。

この場合、住宅ローンの契約者本人は住んでいませんが、生計を一にする家族が住み続けていれば、住宅ローン控除の適用を継続することができます。

ただし、何もせずに自動的に適用されるわけではありません。

手続きのポイント

単身赴任であることの証明や、家族が住んでいることを示す書類などが必要になる場合があります。必ず所轄の税務署や勤務先に確認し、家族のみ居住する場合の手続きを漏れなく行ってください。

住民票を移さずに放置するのではなく、正直に状況を申告することが、結果として自分を守ることになります。(参照:国税庁「No.1234 転勤と住宅借入金等特別控除等」)

 

転勤で親が住む場合の控除適用ルール

よくある質問として、「自分は転勤になったけれど、代わりに実家の親を住まわせれば控除を受けられるのか?」というものがあります。

結論から言うと、これは非常にハードルが高い、あるいは認められないケースがほとんどです。

住宅ローン控除の特例で認められる「家族」とは、基本的に「配偶者、扶養親族その他生計を一にする親族」を指します。

もし親御さんと生計が別(財布が別)であれば、転勤などの事情で自分が抜け、代わりに親が住むという形をとっても、控除の対象要件を満たさないと判断される可能性が高いです。

「親も家族だから大丈夫だろう」と自己判断せず、必ず事前に税務署へ相談することをおすすめします。

 

海外赴任や転勤時は所定の手続きで再適用が可能

海外赴任や転勤時は所定の手続きで再適用が可能

家族全員で転勤先に引っ越す場合、家は空き家(あるいは賃貸)になり、誰も住まなくなるため、その期間中の住宅ローン控除は受けられません。

しかし、諦めるのはまだ早いです。

転勤から戻ってきて再びその家に住み始めた際、控除期間(10年や13年など)が残っていれば、残りの期間分について控除を再開できる制度があります。

これを「再適用」と言います。

再適用の条件

この制度を利用するためには、転居する前に税務署へ届出書を提出するなど、事前の手続きが必須となります。「転勤等のやむを得ない事情」があることが前提ですので、会社の辞令などを保管しておきましょう。

手続きを忘れて引っ越してしまうと、戻ってきても再適用が受けられないことがあるので注意が必要です。

 

住民票を戻さず放置すると過料の対象になる

「また戻ってくるかもしれないから」といって、実際に住んでいない家に住民票を残したままにするのはおすすめできません。

先ほども触れましたが、正当な理由なく住民票の異動届を出さないことは、住民基本台帳法違反となり、5万円以下の過料(罰金のようなもの)が科される可能性があります。

また、自治体からの重要な通知が届かない、選挙の案内が来ないなど、生活上の不便も生じます。

住宅ローン控除目当てで住民票を操作することは、リスクばかりでメリットが薄い行為だと言えます。

 

住宅ローン控除へ住民票だけ移し住まないリスクまとめ

今回は、住宅ローン控除のために住民票だけを移して住まない場合のリスクについて解説してきました。

結論として、居住実態のないまま控除を受けようとすることは「不正受給」にあたり、税務調査でバレる確率が極めて高い危険な行為です。

バレれば追徴課税や一括返済など、控除額以上の損失を被ることになります。

ポイントまとめ

  • 住民票の移動だけでは居住の証明にはならない
  • 不正はバレて、金銭的・社会的信用を失うリスクがある
  • やむを得ない事情があるなら、正規の救済手続きを行うべき
  • 自己判断せず、税務署や税理士、FPに相談するのが最善策

不動産投資や資産運用において最も大切なのは、ルールを守って長く続けることです。

目先の利益に目がくらんで退場することのないよう、正しい知識を持って運用していきましょう。

もしご自身の状況で控除が受けられるか不安な場合は、専門家へ相談されることを強くおすすめします。